池上彰の日本社会での生き方論 - 本のメモ - 伝える力

伝える力 (PHPビジネス新書)

伝える力 (PHPビジネス新書)

本書では、NHKでジャーナリストをなさっていた池上彰さんが自身の経験を踏まえ伝える力はなぜ必要か、そしてどうしたら鍛えられるかを説明している。
しかし、私はその内容よりも氏がNHKで記者をしてきたことを通じて知り得た日本の慣習の方に興味が傾いた。
例えば下記のような箇所である。

アメリカは「儲けた人が偉い社会」だからです。
「むちゃくちゃ儲けました」と言ったら、よくやったと拍手喝采を浴びるような社会です。
でも、日本は違う。大儲けしている人がいたら、日本人は大方、2通りの反応をします。
一つは「うらやましい」。
(中略)
問題はもう一つの反応。それは、「するい」です。
(中略)
これは言ってみれば、嫉妬です。
(中略)
「嫉妬社会」の側面をもつ日本では、たとえすべてがうまくいっていても、それを声を大にして言うのは慎むのが賢明でしょう。

長い記者生活の中、氏は日本の社会の慣習を実感しきちんと認識している。

このような認識があるから、そこから伝えられるこういうときはこうしましょうね、というメッセージも信頼できるし、
そうなんだろうと聞くことができる。
いくつか引用していく。

褒めるときは「みんなの前で」
周りに誰もいないからといって、いきなり叱られたのではいい気持ちはしないし、反発心が先にたってしまうかもしれません。
そこで、原則としては「まず褒める」。叱るのはその後です。

ビジネスパーソンが信頼を得るには、口が堅いことが必要です。

謝ることは危機管理になる
(中略)
一言謝られることで、なんとなく納得し、なんとなく許してしまう。
非常に日本的といえば日本的ですが、これが多くの日本人の感性です。

苦情を生かすには、やはり「伝え方」が重要です。
まずは自分がどういうものかを伝える。
その後、どうして電話したのか、全体像が相手にわかるように話す。
自分として、どう対処してほしいのか。その希望・要望を明確に伝える。
話すときには、なるべく穏やかに、落ち着いて、普通の声音で話す。
これが苦情を言う時の基本です。

最後に、池上彰流、伝える力増強トレーニング方法を抜粋して終わります。

天声人語の文字数はおよそ630文字。これを半分の300文字ほどに書きなおしてみる。

  • 自分で書いた文章を音読してみる。

文章を客観的に見るためのトレーニング。

  • 便利な言葉に頼らずに説明するトレーニング。

「利便性」「創造性」「必要性」「機能的」「生産性」などは便利なので多用しがちですが、それによって思考ストップしてしまうこともある。
場面に応じて言い換えしてみることも大切。

  • 使うべきでない言葉

・そして/それから
・順接の「が」
・ところで/さて
・いずれにしても
・絵文字の類
理由はいずれも論理を無視して使用できてしまうため。

  • 小説を読む

相手に何かを伝えるとき、その相手に伝えたいことのイメージを持って貰う必要があり、そのイメージを学ぶには小説が最適。
自分が直接体験することではないが、様々な状況から設定されている関係で、そこでどう判断すべきか、その都度考えられる。

以上ノシ。