”ならば”は規則にあらず推論なり。- 本のメモ - 入門!論理学

入門!論理学 (中公新書)

入門!論理学 (中公新書)

本書は分析哲学を研究している野矢先生の本である。
野矢先生の本は論理トレーニング101以来だったけれど、これまた面白い。
野矢先生はホント、ユーモアにも富んでいて、本書を読んでいて何度声に出して笑ったことか。
(いや、もちろん知的に面白い方がメインですよ。)

”論理的”などという言葉は日常よく使っていたのだけれど、実際”論理学”という体系についてはちゃんと学んだことはなかったが、
本書でやっとその輪郭を感じ取ることができた気がする。
 
本書は私たちが日常用いている言葉を用い、噛み砕いて噛み砕いてもう細いスジにしてわかりやすく展開してくれていて、
まさに、論理学の入門にぴったりであった。

まずは目次を引用しておく。

あなたは”論理的”ですか?
”否定”というのは、実はとても難しい
”かつ”と”または”、”ならば”の構造
”命題論理”のやり方
”すべて”と”存在する”の推論

この中で印象的だったのが”すべて”と”存在する”の推論の章における全称(すべて)と存在が、”かつ”と”または”にリンクしたところ。

3匹のブタがいて、その名前を「ブー」と「フー」と「ウー」だとしましょう。そしてこれがこの世界に存在するもののぜんぶだとします。

  • 中略 -

”全称(すべて)”は”かつ”を使って表すことができ、”存在”は”または”を使って表す事ができるのです。

  • 中略 -

全称文は連言文に等しく、存在文は選言文に等しくなるわけです。そしてその場合は、「全称の否定 <-> 否定の選言」という法則とまったく同じものになり、「存在の否定<-> 否定の全称」という法則は、「選言の否定 <-> 否定の連言」という法則とまったく同じものになります。ここに、どちらも”ド・モルガンの法則”と同じ名前で呼ばれる深いわけがあるわけです。

これはすごい。ド・モルガンの法則がすべてと存在までもまとめてしまったのだから。


最後に脱線で特に面白かったものを引用して終わります。

一般に動く生き物は「いる」で、無生物や動かない生き物は「ある」ですが、私が日本語ってすごくおもしろいなと思ったのは、私たちは大腸菌に対してさえ、「この川には大腸菌がいる」と言って、しっかり大腸菌を生物扱いしているということです。それに対して、生き物と無生物の境はウイルスですが、「この部屋にはインフルエンザ・ウイルスがいる」というのは、ちょっと微妙になってきて、少なくとも大腸菌ほど堂々と生物扱いしていない感じがあります。